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ウェブサイトのアクセス解析の重要性とメリット・デメリット

最終更新日:2024年2月24日 執筆:SEOコンサルタント 鈴木将司

1. アクセス解析の重要性

前回の記事までは、ウェブサイトの訪問者数を増加させるために必要なウェブマーケティングの手法をご紹介しました。ウェブマーケティングの施策を実施した後は、その成果をどのように評価するかが重要です。

《ウェブマーケティングを実施した効果を検証》

ウェブマーケティングの成果を評価する際に不可欠なのが、ウェブサイトのアクセス解析です。アクセス解析とは、ウェブサイトに訪れるユーザーの行動を記録し、そのデータを分析することにより、ユーザーがサイト内のどのページを訪問し、どのようなアクションをとったか、そしてどのようにサイトを離れたかを理解するプロセスです。

《ウェブサイト訪問者の行動を観察》

この分析により、ウェブサイトの問題点を明らかにし、それを解決するための手がかりを得ることができます。

ウェブサイトのアクセス解析をすることには次のようなメリットとデメリットがあります。

《メリット》

① ユーザー行動の理解

ウェブサイトのアクセス解析は、訪問者の行動パターンを深く理解するための重要なツールです。この解析を通じて、次のような貴重なデータを収集し、分析することができます。

(1)人気のページ

・ページビュー
各ページが何回閲覧されたかを示します。

・ユニークビジター
同じ人が複数回訪れた場合でも、1回として数える訪問者数です。

・エントリーページ
訪問者がウェブサイトに初めてアクセスしたページです。

《GA4(Googleアナリティクス4)のデータ》

(2)滞在時間

・セッション時間
訪問者がウェブサイトに滞在している平均時間です。

・ページごとの平均滞在時間
各ページで過ごす平均時間です。

《GA4のデータ》

(3) 離脱ページ

・直帰率
訪問者が一つのページだけを見てサイトから離れた割合です。

・離脱率
特定のページからウェブサイトを離れる割合です。

《GA4のデータ》

これらのデータを分析することで、ウェブサイトの改善点を見つけ出し、より効果的なコンテンツ戦略を立てることができます。例えば、滞在時間が長いページや低い直帰率のページは、訪問者にとって価値が高いと考えられます。逆に、高い直帰率や短い滞在時間のページは、コンテンツの改善が必要だと判断されます。

また、どのチャネル(流入経路)やキャンペーンが最も効果的であるかを把握することもできます。これにより、マーケティング予算の最適化ができるようになりROI(投資対効果)の向上が図れます。

《GA4のデータ》

アクセス解析を行うためには、Googleアナリティクス 4(GA4)のようなツールを利用するのが一般的です。これらのツールは詳細なデータを提供し、カスタムレポートの作成やユーザーセグメンテーション(共通の特性に基づいて、ユーザーを個別のグループまたはセグメントに分けるプロセス)など、多岐にわたる機能を提供します。

最終的には、これらの解析を通じて、よりユーザーにフレンドリーなウェブサイトを構築し、ビジネス成果を最大化することが目指せます。

② コンバージョン率の向上

どのページやキャンペーンが最もコンバージョン(成約)に寄与しているかを把握することができます。この情報をもとに、サイトの設計やマーケティング戦略を調整し、コンバージョン率を高めるチャンスを発見できます。

(1)コンバージョンの追跡

「コンバージョン」とは、ウェブサイト訪問者が望ましいアクション(購入、問い合わせ、メール登録など)を行うことを指します。アクセス解析を行うことによりコンバージョンの追跡が可能になります。どのページやキャンペーンがコンバージョンに寄与しているかを把握できるようになるからです。これには、Googleアナリティクス 4のようなツールを使用して、特定の目標達成の状況やサイト上での取引発生数を追跡することができます。

(2)サイトの設計とユーザー体験の改善

サイト内のどのページにユーザーが最初に訪問したかを追跡できます。ユーザーが最初に他のサイトや検索エンジンから訪問したページを「ランディングページ」と呼びます。ランディングページには、明瞭でわかりやすいCTA(コールトゥアクション:ウェブサイトの訪問者を具体的な行動に誘導すること、もしくは、具体的な行動を喚起するページ内に設置された画像やテキストのこと)、魅力的なビジュアル、分かりやすいナビゲーション(サイト内の他のページにユーザーを導くリンク)が重要です。

《CTAの例》

サイトの使いやすさを高め、訪問者が情報を簡単に見つけられるようにしてユーザー体験の改善がしやすくなります。近年では多くのユーザーがスマートフォンでサイトを見ることが多いためモバイルフレンドリーなデザインにすることも重要なユーザー体験の改善になります。

(3)A/Bテスト

A/Bテストとは、異なるバージョンのページをテストし、どちらがより高いコンバージョン率を達成するかを評価する実験手法です。アクセス解析データを見ながら、A/Bテストの結果を検証にどちらのバージョンがユーザーにとって最適化を判断することが可能になります。

③ ROIの測定

マーケティングキャンペーンや広告の投資収益率(ROI: Return On Investment)を測定することができます。どのマーケティング活動が効果的で、どれが費用対効果が低いのかを理解し、予算をより効果的に配分することができます。

ROIは、マーケティングキャンペーンや広告の効果を金銭的に評価するための重要な指標です。ROIを計算することで、どのマーケティング活動が費用対効果が高いかを判断し、予算を効果的に配分することができます。

(1)ROIの計算方法

ROIは通常、以下の式で計算されます:

※ 獲得利益 = マーケティング活動によって得られた利益
※ 投資額 = マーケティング活動にかかった総コスト

(2)データの収集と分析

売上の追跡により、特定のキャンペーンや広告が直接もたらした売上を把握する必要があります。また、そのキャンペーンにかかったキャンペーン管理の費用、外注費など、関連するすべてのコストの計算することで、どれだけの投資により、どれだけの成果が出たのかを明確にできます。

(3)効果的な予算配分

高いROIを達成しているキャンペーンや活動を特定することが可能になり、効果的なキャンペーンを特定できます。それにより、低いROIを示す活動は、改善するか、または廃止して経営資源をより効果的な活動に再配分することが目指せます。

このようにアクセス解析をすることでROIを把握することが可能になり、マーケティング予算をより効果的に使用することが目指せます。また、どのチャネルやキャンペーンが最も効果的かを知ることで、戦略的に意思決定を行うことができます。

④ ユーザー体験の改善

ページの読み込み速度やナビゲーションの使いやすさなど、サイトのユーザビリティに関する問題点を突き止めて、修正することで、ユーザー体験(User Experience, UX)を向上させることができます。

(1)ページの読み込み速度

ページの読み込み速度はユーザー体験に直接影響します。速度を向上させるためには、画像の最適化、キャッシュの利用、不要なスクリプトの削除などが有効です。
それを実現するにはGoogleが無料で提供するPageSpeed Insightsを利用して、ウェブサイトのパフォーマンスを定期的に監視し、改善点を発見します。

《PageSpeed Insightsの測定結果の例》

《参考サイト》 PageSpeed Insights

(2)ナビゲーションの使いやすさ

ユーザーが求める情報に簡単にアクセスできるよう、明瞭で直感的なナビゲーションを設計します。そのためには実際のユーザーを対象にテストを行い、ナビゲーションの使いやすさを評価することが有効です。

(3)ユーザビリティの問題点の特定と修正

ユーザーからのフィードバックやサポート依頼の内容を分析して、問題点を特定します。そして 異なるデザインやレイアウトを試して比較するA/Bテストをして、ユーザビリティを改善します。

こうしたユーザー体験の改善をすることで、ユーザー満足度の向上、コンバージョン率の向上、ブランドイメージの強化などをすることができます。最終的に、ユーザー体験の改善は、ウェブサイトを訪れるすべてのユーザーにとっての利便性を高め、ウェブサイト全体の成功に貢献します。

⑤ 戦略的意思決定のサポート

アクセス解析から得られるデータは、ウェブサイトの改善や新しいコンテンツの開発、市場動向の把握など、戦略的な意思決定を行う上で有益な情報を提供します。それらはビジネスやウェブサイトの戦略を形成する上で不可欠な情報源であり、次のようなことを実現するのに役立ちます。

(1)ウェブサイトの改善

訪問者の行動パターンを分析することで、ウェブサイトのどの部分が最も効果的で、どの部分が改善が必要かを理解できます。さらには、どのページが最もコンバージョンに寄与しているかを把握し、それらのページをさらに強化するのに役立ちます。

(2)新しいコンテンツの開発

最も人気のあるコンテンツを特定し、類似または関連するコンテンツを開発することで、ユーザーエンゲージメントを高めます。そして、訪問者の興味やニーズが時間とともにどのように変化しているかを追跡することでトレンドの把握がしやすくなり、それを参考に似して新しいコンテンツを作成することが可能になります。

(3)市場動向の把握

訪問者の年齢、性別、地理的位置などのデータを分析することで、ターゲット市場をより深く理解できます。また、どの流入チャネルが最も効果的であるかを把握し、マーケティング戦略を調整することに役立ちます。

こうしたデータに基づく意思決定は、客観的なデータを基にしたものであるため、仮説や直感に頼るよりも、より確実な結果をもたらしやすくなります。そして収集したデータは、ビジネスの目標に沿った戦略的な計画を立てる上での重要な材料となります。それにより、どの分野にリソースを投入すべきか、またいつ投入すべきかという経営資源の効率的な配分の実現を助けます。

《デメリット》

① データの過多に悩まされる

非常に多くのデータが生成されるため、重要な情報を見逃したり、どのデータが実際に有用であるかを判断するのが難しい場合があります。

データの過多は、ウェブ担当者や経営者が大量のデータを入手した際に、重要な情報を見逃したり、どのデータが実際に有用であるかを判断するのが困難になる現象です。特にデジタル時代において、企業や組織は膨大な量のデータにアクセスすることができますが、その全てが有益であるわけではありません。

(1)データの過多が生じる原因

ソーシャルメディア、トランザクションデータ、ウェブサイトのアナリティクスなど、多様な情報源からデータが生じます。こうした膨大なデータは自動データ収集ツールの使用により日々生まれ、見きれないほどのデータの量にウェブ担当者や経営者は圧倒されます。

(2)データの過多がもたらす問題

重要なデータやトレンドを見逃す「情報の見落とし」というリスクがあります。どのデータが重要で、どのデータが無関係かを判断するのが難しくなります。また、大量のデータをスピーディーに処理することができなくなり分析が遅れ、意思決定が遅くなるリスクもあります。

(3)データの過多を管理する方法

この問題を解消するには、事業目標やKPI(重要業績評価指標)に基づいて、最も重要なデータに焦点を当てるというデータの優先順位付けが求められます。その他、 データをカテゴリや重要度に応じて分類し、管理することも有効です。さらには、適切なツール(データ分析ツールやダッシュボード)を利用して、データを効率的に分析し、可視化することが有効です。

これらの方法を用いてデータの過多という問題に適切に対処することで、情報の洪水の中から有益な発見を引き出すことが可能になります。

② スキルと知識が要求される

アクセス解析ツールを最大限に活用するには、特定のスキルと知識が必要になります。データを解釈し、行動に移すには専門的な知識が必要になります。アクセス解析ツールを最大限に活用するために必要なスキルと知識には次のようなものがあります。

・データ分析スキル
データを収集、処理、分析する能力が必要です。これには統計学的手法や分析ツールの使用が含まれます。

・テクニカルスキル
アクセス解析ツールを操作し、設定をカスタマイズする能力が求められます。また、ウェブ開発に関する基本的な知識も有益です。

・レポーティングスキル
分析結果をわかりやすい形で報告し、非技術者にも理解できるようにする能力が重要です。

・アクセス解析ツールの知識
Googleアナリティクス4などのツールの機能や使い方を理解する必要があります。

・市場動向の理解
業界やターゲット市場に関する知識が、データの解釈に役立ちます。

・ビジネス戦略
データ分析結果をビジネス戦略にどのように統合するかを理解することが重要です。

こうしたスキルと知識を獲得するには、オンラインコース、研修、ワークショップ、専門書籍などを利用することが一般的です。また、単に情報をインプットをするだけでなく、実際のプロジェクトでの経験を積むというアウトプットも重要です。

③ プライバシーの懸念が生じる

GDPRやCCPAなど、ユーザープライバシーに関する法律が強化されている現在、個人データの収集と処理には慎重である必要があります。最近のデジタルプライバシーに関する法律の強化は、企業がユーザーデータを収集・処理する方法に大きな影響を与えています。代表的な法律として、欧州一般データ保護規則(General Data Protection Regulation, GDPR)やカリフォルニア消費者プライバシー法(California Consumer Privacy Act, CCPA)があります。日本の企業であっても、ウェブサイトを利用するユーザーがこれらの国や州の住民である可能性があるので遵守する必要性に迫られています。

《GDPRなどの法規制に対応するためにサイト内に設置されたメッセージの例》

(1)GDPR

GDPRはEU域内での個人データの保護を目的としています。ユーザーからの明示的な同意なしに個人データを収集・処理することを禁じています。企業には、ユーザーが自分のデータにどのようにアクセスし、それを管理できるかについて明確な情報を提供することが求められます。

(2)CCPA

CCPAは、カリフォルニア州の住民に対するプライバシーの権利を強化するものです。カリフォルニア州に在住するユーザーは自分の個人データにアクセスし、必要に応じて削除する権利を持っています。

(3)個人データの収集と処理の懸念

これらの法律に違反すると、重大な財政的ペナルティや評判の損失につながる可能性があります。個人データの安全な管理と、明確で透明なプライバシーポリシーの実施が企業に求められます。法律を遵守し、個人データを慎重に扱うことは、ユーザーの信頼を獲得し維持するために重要です。

ユーザーが抱くプライバシーへの懸念に対応するには、ユーザーからのデータ収集には明示的な同意が必要です。そのため最近ではウェブサイトを初めて訪れた際には画面の下の方に個人情報の利用に関する注意事項に同意するかをユーザーに選択肢もらうためのポップアップの表示が普及しています。他にも、データの暗号化、アクセス制御、定期的なセキュリティ監査などを通じてデータ保護を強化する必要があります。さらには、ユーザーに対して、収集するデータの種類、目的、保管方法について明確に説明して
データの利用用途の透明性を確保する必要性が生じるようになりました。こうしたプライバシーへの懸念への適切な対応は、法律遵守だけでなく、ユーザーの信頼とビジネスの持続可能性を確保するためにも重要なことです。

④ 「分析のパラドックス」に陥る

データに基づく意思決定が必ずしも正しいとは限りません。過度にデータに依存することで創造性や直感が損なわれる可能性があります。
分析のパラドックス(Paradox of Analysis)とは、データに過度に依存することで生じる矛盾を指します。データに基づいた意思決定は非常に有効ですが、過度にデータに頼りすぎると創造性や直感、人間的な洞察が抑制される可能性があります。

データはしばしばコンテキスト(文脈)を欠き、その結果、誤解や間違った解釈を引き起こす可能性があります。または過去のデータに基づく意思決定は、未来の変化や新しいトレンドを見逃す可能性があります。こうしたデータの罠にはまらないようにするためには、データだけに依存せず、創造性や直感を使って問題を解決することが重要です。また、経験や直感も重要な意思決定の材料であり、これらをデータ分析と組み合わせることが望ましいといえます。データ分析を行いつつも、柔軟な思考とアプローチを保持するフレキシブルな姿勢を持つことが重要です。

⑤ 時間とコストがかかる

アクセス解析には時間がかかるだけでなく、高度な分析機能を持つツールを使用する場合にはコストもかかります。適切なアクセス解析をするには、ウェブサイトのパフォーマンスを評価し、改善策を講じる上で不可欠ですが、これには時間とコストが要求されます。
大量のデータを収集し、整理するのに時間がかかるからです。また、データを分析し、その結果を理解しやすい形でレポートにまとめるには専門的な知識と時間が必要です。

以上が、ウェブサイトのアクセス解析をするメリットとデメリットです。これらのメリットとデメリットを考慮しながどこまでのレベルのアクセス解析をするのかを判断しましょう。

2. GoogleアナリティクスとGoogleサーチコンソールの違い

ウェブサイトのアクセス解析にはいくつかのツールがありますが、GoogleアナリティクスとGoogleサーチコンソールは、多くのサイト運営者に使用されている主要なツールです。

Googleアナリティクスは、Googleが無料で提供しているアクセス解析ツールで、世界中で非常に高い利用率を誇ります。このツールは、サイト訪問者の行動履歴を収集し、分析します。以前はユニバーサルアナリティクス(UA)として知られていましたが、最新バージョンのGoogleアナリティクス4(GA4)が2020年10月から提供されています。2023年7月からは、GA4のみが利用可能となりました。

GA4を使い始めるには、アカウントを登録し、ウェブサイトのすべてのページに計測用のトラッキングコードを埋め込む必要があります。

《サイト内にあるウェブページに貼り付けられたトラッキングコードの例》

このコードがページを開いた際に作動し、トラッキング情報をGoogleのサーバーにあるデータベースに送信します。これにより、GA4の管理画面からアクセス解析データを確認することができます。

《GA4の管理画面の例》

一方、Googleサーチコンソールは、Google検索結果におけるウェブサイトのパフォーマンスと問題点を特定するツールです。検索パフォーマンスのセクションでは、ユーザーがどのクエリでサイトを見つけ、どれだけクリックされているかを把握できます。また、サイトのページがGoogleのインデックスに登録されているか、表示速度が遅いページはないかなどの問題も自動的に指摘されます。クローラーとは、ウェブサイトを巡回し、検索エンジンのランキングに必要な情報を収集するロボットプログラムです。

《Googleサーチコンソール内にある検索パフォーマンスのデータ例》

サーチコンソールは、ウェブページにトラッキングコードを埋め込む代わりに、ウェブサイトのURLを登録するだけで利用できます。登録後数日以内にデータが表示され始めます。

《Googleサーチコンソールの登録申し込み画面》

以上が、ウェブサイトのアクセス解析の重要性とメリット・デメリット、そしてにGoogleアナリティクスとGoogleサーチコンソールの違いについてです。次回の記事では世界で最も利用されている人気のアクセス解析ツールである「Googleアナリティクス4」について解説します。

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